『お金2.0』を読んで考える、”価値”とは何か?
メタップス代表佐藤航陽さんの『お金2.0』を読みました。
前半は仮想通貨、ブロックチェーンの一般的なお話が書かれた後、
人間つまり脳の集合体が経済を動かしているということを鑑みると、
うまく回っている経済システムの背景には脳の報酬系が起因している。
つまり、なぜ、今仮想通貨市場が勢いを増しているのか、
その答えは人間の脳の仕組みに関係しているのではないか。
ということが書かれていました。
ここで面白いことは、脳科学と経済学は今まで語られることがなく、
学問上切り離されていたものの、根底は類似・関連しているかもしれないということです。
ちょうど大阪大学の石黒さんと為末さんの対談記事でも似たようなことが書かれていて、
ロボットをつくるためにロボット工学、脳科学だけじゃなくて、心理学などいろんな学問の集合値がヒト型ロボットなのではないか、、なんてことを思いました。
ここからまた本題に戻りますが、さらに面白いと思った概念として、
知識の民主化から経済の民主化が起こることで、資本主義から価値主義になる
ということです。
価値を体現するはずの資本そのものが正しく価値を評価できなくなってきているから、
資本に基づいた価値ではなく、価値そのものが見直されている状況のように感じます。
【価値は大きく3つに分けられる】
①有用性としての価値:スキル・経験など、リターンを前提にした価値
②内面的な価値:共感や好意など、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす価値
③社会的な価値:信頼や人脈など、社会全体の持続性を高めるような活動
今まで①有用性としての価値に重きが置かれていたが、②内面的な価値と③社会的な価値こそが、個人を個人たらしめる価値になりつつある。
この本の中ではマークザッカーバーグのハーバード卒業式の式辞だけシェアされていましたが、
今年のザッカ―バーグの抱負にも近しいことが書かれていましたね。
中央集権的な考えではなく、社会全体をよくするために、、、という思想が伺え、
佐藤さんもその影響を強く受けていることがわかります。
その人でなければいけない、この人だからこそできる、といった独自性がそのまま価値に繋がりやすい
個人的に「なぜ成長産業のベンチャーで経験をつまないといけないのか?」ということが最近の考え事なんですが、
内面的な価値や社会的な価値を重んじるスタートアップで得られる価値は、
お金にも変えられることはもちろん、
お金だけじゃなくて他のものにも変えられるという価値の交換性が高く、
個人の希少性を高められる確率が高まるからなのかなと納得しました。
ちなみに、本文でも出てくるソーシャルキャピタルは
2012年の大学院時代にめちゃくちゃ勉強した社会学の概念(その当時も新しい概念というよりは割と前からある概念)であり、
かなり久しぶりに聞いた単語なだけに佐藤さんがめちゃくちゃ勉強されていることを感じたので、
「価値って何?」という問いを綺麗に整理整理をするには良書だと思います。
【併せて読みたい仮想通貨ビットコイン系の本】
●『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』
└ビットコインがどんな仕組みでマイニングされているのかをかなりかみ砕いて書かれた本なので、本当に「今更ビットコイン、ブロックチェーンって何?」という人向けのような本だと思います
●『アフター・ビットコイン:仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』
└非中央集権的仕組みがブロックチェーンの良いところだと大体の本や記事には載っていますが、もう少し突っ込むとハイブリット的な(半分中央集権化する)ブロックチェーン技術があったりするなど、少し専門的なところが多いので、ブロックチェーン技術が好きな金融機関の人向けのような本だと思います