『睡眠の科学』を読んで、脳科学観点から感情を読み解く
睡眠の研究で有名な筑波大学櫻井先生が書かれた『睡眠の科学』を読みました。
ちょうど今週の日経でニューロスペースはじめ官民が予防医療に乗り出す記事がでたり、
仕事でお会いしたFacebookの方が、
人間の心理は脳科学が起因しているので脳科学に興味があるという話をされていたのですが、
私も全く同感で、”科学”である以上、新規性と再現性は問われるべきで、
心理学はその部分がかなりファジーで(ファジーだからこそおもしろいんですが)、
この本から情動(感情)を司る”大脳辺縁系”が人間のこころに影響していることがわかりました。
従来、心で感じたままに動くとか、感情があたかも心によって作られているように感じていましたが
実は、大脳辺縁系における”扁桃体”は好き嫌いを判定する部分であり(もともとは生存における意思決定をするための機能)、
この扁桃体が感情を作り出し、心機能に影響することがわかっています。
つまり、心は脳の動きを可視化しているにすぎないと。
とはいえ、スポーツをしているときなど、「無意識に身体が動く」という経験をしたことがあるように、
意識は心身のすべてを管理しているというよりも、意識が管理しているのはごく一部で
あることから、一概に脳が感じたことが正しいというわけではなさそう
という点に置いて人間の奥深さとともに、面白さを感じますよね。
本題の睡眠においても、覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠の違いをモノアミン作動性システムとコリン作動性システムの動きによって規定されることがわかりました。
少しネタバレをすると、
・レム睡眠時は脳は活発で脳から下が麻痺している状態なのですが(だから夢をみても身体が動かない)、その背景にはモノアミン作動性システムが完全停止/コリン作動性システムが活発になっている
・ノンレム睡眠時は脳の機能は落ちるが身体の感覚系は遮断されていない状態で(だから寝返りうったりする)、モノアミン作動性システム・コリン作動性システムはどちらも低下する
それぞれのシステムはイメージスイッチみたいなもので、それぞれの影響する神経系があり、その神経系が脳機能に影響をもたらすことでスイッチオンオフになるという仕組みのようで、
神経系自体可塑性があるのでたとえ一つの神経系のルートがなくなったとしてもそれを補うように変化が生じるなどなど、一辺通りにいかないところが、心理学にも通じる部分があり、研究し続けるおもしろさを感じました。
このような専門的な話もあれば、
・睡眠薬はモノアミン作動性システムに作用するだけではなくその上位にある大脳皮質にも影響するので、現在は覚醒に影響するオレキシンに作用する睡眠薬がある
・睡眠中枢と呼ばれる視索前野でアデノシンという物質が作用して眠たくなるので、カフェインはアデノシンに拮抗することで眠気覚まし効果があると言われている
・モノアミン作動性システムの構成要素にヒスタミンがあり風邪薬はこのヒスタミンに作用することで眠くなる
などなど素朴な疑問に対して脳機能の観点から説明されていたのでめちゃくちゃわかりやすかったです。
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便宜上学問は分断されていますが、よりリアルの世界で学問を応用していくにあたり
これからますます一つの学問で一つの事象を説明するのではなく、
複数学問によって複数事象を同時多発的に説明していく必要があるのではと思います。