『知識創造企業』を読んで、暗黙知と形式知を用いて目指す組織について考えた

『知識創造企業』を読みました。

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実は大学院時代にめちゃくちゃハマった暗黙知形式知の本だったことに読みながら気付きました。

 

この本は日本企業(花王、日産、三菱など)が成功した理由を組織づくりの観点から紐解かれていて、著者は共にUCバークレーで学ばれた経営学部なら知らない人はいない野中郁次郎さんと竹内弘高さんとなります。

 

この本の題名にもなっている

「組織的知識創造」とは、

 

組織成員が創り出した知識を、組織全体で製品やサービスあるいは業務システムに具現化すること

 

とあるように、この本は知識がベースになっており、

最初の方は知識について哲学者の考えを

・合理論(知識は感覚的経験ではなく理性の動きによって得られる)と

・経験論(感覚経験だけが知識の源泉)

に分けて、どんな風に議論されてきたのかを論文風に記載されていました。

 

その中で日本においては合理論よりは経験論的側面にて知識が捉えられていて、それが日本の経営にも影響しているのではという主張がありました。

<日本経営のポイント>

「主客一体」

・日本人は自己と自然を分離・客体化しなかったがゆえに、はっきりした普遍性を持った合理的な思想を構築することができなかった

・日本的な時間の捉え方は、どちらかといえば循環的で刹那的

・日本人の空間的意識は、伝統的な日本画に描かれているように、固定した視点を持たない

 

「心身一如」

・日本人にとって知識とは、全人格の一部として獲得された知恵を意味する

 

「自他統一」

・日本人は人間集合を有機的生命体と見なす

・日本人が他人の言ったことに共感かつ同意しやすいのは、動詞が人称にかかわらず同じ形で用いられるから

 

この本のキーワードでもある形式知暗黙知とは、

形式知:言葉や数字で表すことができ、厳密なデータ、化学方程式、明治かされた手続き、普遍的原則などの形でたやすく伝達・共有することができる

暗黙知:主観に基づく洞察、直観、勘など他人に伝達して共有することが難しいもの

であり、

形式知暗黙知はそれぞれ独立して存在するのではなく、それぞれ相互に作用して組織的知識創造を起こします。

 

<知識変換プロセス>

暗黙知暗黙知形式知形式知暗黙知
┗共同化┛ ┗表出化┛ ┗連結化┛ ┗内面化┛

 

暗黙知暗黙知:共同化:経験を共有することによってメンタル・モデルや暗黙知を創造するプロセス

暗黙知形式知:表出化:暗黙知がメタファー、アナロジー、コンセプト、仮説、モデルなどの形をとりながらしだいに形式知として明示的になっていく:知識創造プロセスの真髄

形式知→型式知:連結化:異なった形式知を組み合わせて新たな形式知を創り出す

形式知暗黙知:内面化:個々人の体験が共同化、表出化、連結化をつうじて、メンタル・モデルや技術的ノウハウという形で暗黙知ベースへ内面化される

そして内面化された暗黙知はまた共同化を通じて新しい知識変換のスパイラルへとつながっていく。

 

文字だけ見るとやや小難しいですが、私たちに当てはめると、

「共同化」は1on1やOKR面談で、

「表出化」は私たちのこだわりたい価値基準を3つのValueに示したことだと思います。

表出化が知識変換の真髄だと言われているように、今まで軽視されがちというかよくわからなかった個々人の暗黙知が組織的な暗黙知になり、それが形式知という形で明文化されることで時間の制約を超えて再生可能かつ伝承可能になるんだと思います。

 

もう少し具体的にすると、社長がずっと意思決定する状態よりも、

”社長だったらこうする”という考えをもった人が増えるのはいい組織に近づいていると感覚的に思う理由はなぜでしょうか?

 

 

なぜなら、社長しか考えられないことももちろんあるし、どこまで行ってもコピーは作れないですが、

社長の考えを少しでもインストールできる人が増えることで、意思決定のスピードと精度が上がるだけではなく、

社長の考えに元来その個人が持っている個性が掛け合わせられることで新しいイノベーションを生み出すことができるからだと思います。

 

よくValue作った方がいいと言われていますが、ただ文字情報にするのではなく、暗黙知形式知のプロセスに基づいてValueを策定することで
組織としてはブレイクスルーのきっかけになるということがこの本からわかりました。
 

そして、「内面化」を手助けするものとして、ブランドブックやヒストリームービーがあるんだと思います。

 

もちろんこの本というか経営学ケーススタディは成功企業からそのパターンを導き出すため結果論といえばそれまでなのですが、

成功企業から学ぶことで、自分たちの目指すべき場所と立ち位置を知ることができるのではないでしょうか。