『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』とテクノロジー権威者の話から、鍵は<アーキテクチャ>と<抽象化>にある

『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』を読みました!
これは、1985年東大卒業後、2020年まで通産省にいらっしゃった西山さんの本で、
デジタルの歴史からネットフリックスといった企業の事例まで、いろんな角度からDXの”構造”を理解できる本でした。面白かったです。
 
 
 
 
 
消化しきれていない部分もありますが、特に印象的だったのは以下4点です。
●上がってから下がる
・デジタル化のロジックとは「具体ではなく抽象」だということ、つまり「この手を打てばいま目の前にある具体的なもの以外のものも含めて、何でも処理・解決できてしまうのではないか」という発想である。
・「まずは抽象化してみて、それから具体化する」、つまり「上がってからはじめて下がる」
・コンピュータ、人工知能の発達を含むデジタル化の歴史は、最も広く言えば、人類の課題を解く共通の解を探究し、創造する、ということだといえる。 
→課題そのものはむしろ多様化しているなかで、デジタルという共通基盤ができることで業界や業種の縛りが軽減され、課題の解き方は汎用化できる可能性があるということがわかりました。
 
●目的や戦略に基づいて組織が規定される
ネットフリックスがこだわったポイントは「顧客の試聴経験の最適化」であり、そのためにマイクロサービス化を進めたことから、「コンテクストによる経営」を実現。
コンテクストによる経営をしたくてマイクロサービス化したというよりは、サービスをつくるうえでマイクロサービス化が必要で、その結果、会社の方針もより機動力をもった形になった。
 
●「本屋にない本を探す」
・「選択と集中」と言えば、これまでは業種的な考え方を前提とした事業の取捨選択であった。しかし、デジタル全面化時代の選択と集中とは、おそらくここでいうように、デジタル化の本棚を見渡した上で、既にあるものは他社に譲り、そこにはない本を探して、その実現に資源を集中することになるはずだ。
・本棚にすでにある他人のプロダクトを利用することを「業務の効率化」、そして本棚にない本を自分で開発することを「プロダクト」と呼んでいる
・この話は我が国におけるスタートアップの未来とも関係している。日本は製造業を含む大企業とパートナーシップを組むことが、世界の本棚にない本をつくるという意味では決め手になるはずだ。
→ネットフリックスもインフラを自前でつくるのを止めてAWSに移行し、その代わりに最適な試聴経験ができるようにストリーミングが始まるまでの時間を徹底的に短縮したり、顧客の傾向に合わせてレコメンド作品のカスタマイズをしたように、その会社が何にこだわりたいのかを決めることが大事で、そのこだわりたい部分は自前でつくり、そうじゃない部分は他社のを使うというのが今後の戦略策定の鍵になると思います。
 
●「リアルに迫れば垣根は消える」
・パターンを切り出すと、フィジカル側に我々が設定していた従来の区分を飛び越えて、横切ることが出来るようになる。ダイセルの例で言えば、網干のプラント内部を知ろうとして内部状況をいくつかのパターンで表現し、それをモニターで表現しようとすると、それは他のリアル、つまり、網干以外の工場、他の会社の化学プラント、他のプロセス産業一般に使える
・第4次産業革命は、製造業かどうかなど業種を問わない一つのロジックで語ることができるのである。
・もしDX力というものがあるとしたら、それはこのロジックを身につけることである。そして、サイバーとフィジカルの間を行き来することで強みを発揮するのが、日本の企業人が目指す道だとするなら、この垣根を超えてパターンを見出す力こそ、最も身につけなければならないロジックであり、スキルだということになる。
→「リアルに迫れば垣根は消える」という言葉の通り、その業界/業種独自のものだとしてもパターン化してデジタル化することによって、その業界/業種独自のものではなくなるというのは、デジタル化の本質だと思います。
 
 
だからこそ、
アーキテクチャとは、ビジネス、産業、社会を複雑なややこしいシステムとして捉え、それに対して人間(社会)がソフトウェアのロジックを基本において立ち向かうためのもの
・ソフトウェア・アーキテクチャは、静的な構造ではなく、ソフトウェアを実際に動かしたときにそれが実行する内容を表現すべきなのだ
とあるように、
アーキテクチャアーキテクチャ単体で捉えて美しい構造を作ることに目を向けるのではなく、社会や自社やサービスをどう捉えるのかというところに目を向ける必要性があるんだと思いました。
 
 
そして、直近ビービット とエクサウィザーズがやっているオンラインイベントでもほぼ同じようなことを言われていて、とくに
アーキテクチャ(アーキテクト)
・抽象化して具体化する
オピニオンリーダーの共通認識としてあると思います。
 
 
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 ①ビービット イベントメモ
UX・DXオンラインフェス「L&UX2021」をベースに話がされていたのでついていくのに苦労しましたが、、、
(イベント内容は一部noteで書き起こされている)
ポイントは以下3つでした。
 
●シェアドバリュー
・経済合理性だけではなく、環境、人種、健康など社会をよくするためにどうするのか、という流れに変わってきているところで重要になるのがシェアドバリュー
→これによって既存の車産業、家電産業っていうモノ起点ではなく人起点になる
・ユーザーとの対話なくして具体ステップは完成しないし、作る側が繋げたいものを繋げても誰も使わないので、ユーザーがどういう体験をするか、その体験から考える
・UXは入り口ではなくユーザーの絶え間ないフィードバックを得ながら磨いていくもの
 
●アーキテクト
・シェアドバリューに基づいて世の中の捉え方が変わると、一人の人が全てを理解することはできなくなるため、鍵になるのがアーキテクト(いろんな人の意見をまとめる統合屋さん)
・アーキテクトにとって必要な要素:知的好奇心と最後までやり切ること
 
●アイデアの優先順位(シナリオの作り方)
・価値の親和性と体験の連続性
 
人を巻きこむために大きなビジョンを掲げるのではなく、大きなビジョンを掲げた結果巻き込まれる人が増えるというのに納得しますし、
より社会にとっていいことを掲げた人や企業に、他の人や企業はついていくんだと思います。
そんな素敵なシェアドバリューを掲げる人や企業が増えれば増えるほど、バリューそのものに大きな差は生まれず、
少し穿った見方をすると、巻き込まれるより巻き込みたいし、みんなプラットフォーマーを目指すようになるのかなとも思います。
だからこそ、『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』にも書いてましたが、
何をどこまで内製化して、どこからは外部のものを作るのか、
競争領域と協調領域は社内で決めるしかなく、
ファシリテート(アーキテクト)ってめちゃくちゃ重要だなと思いました。
 
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②エクサウィザーズのイベントメモ
楠木先生と暦本先生のお話の共通点として、
「具体を抽象化する」
があると思いました。
教科書とかに書いてるような抽象的なことを、自分に置き換えて具体化する、
ということはよくしてきましたが、
その逆もあるし、むしろ具体を抽象化することで世界と対話できるようになるんじゃないかと思います。
自分の身の回りにあることや、好きだなって思うことを、言語化し、抽象化するためには
ボキャブラリーや知識、経験があった方がいい。
勉強したり、挑戦したり、場数踏むことそれ自体もすばらしいですが、
それがいいというよりは、それによって世界と対話できるネタが増え、アイデアのタネになることがすばらしいんだと思います。
 
【楠木先生の人口減少期にすべきこと、すべきでないこと】
●今の課題:人口減と言われるが、明治から1980年までは人口増が課題だった
・コントロールできることとコントロールできないことを見分け、コントロールできるところに資源集中する
・人口減はコントロールできないので、人口減をポジティブに捉え、それを最大化するためのビジョンと政策をリーダーが打ち出す
・絶対悲観主義(どうせうまくいかない)から、楽観が生まれる
●楠木先生が興味あること:重要なことほど事後性が高い
・大切なことは後から振り返るとわかるものであり、本を読むことは事後性が高い(=後から振り返ると大事だったと思う)
・後から振り返ってみないと大事だったかどうかがわからないのでやってみないとわからないけど、
できる限り後から振り返ったら大事だったね、ということをしたい場合(事後性の克服)個々人がやりたいことをやるというのがいい。「とはいえやりたいことやっても食べていけない」という人は、具体的にやりたいことを抽象化したときに、他に適応可能な好きのツボがみえてくる
【暦本先生の妄想する頭、思考する手】
●誰でも妄想するといいつつ、何も浮かばない人
・答えがあるものは解く必要ない
・研究室ではなんでもいいのでおもしろいものをみつけて発表する:なぜ面白いと思ったかというセンスと、伝えることで言語化できる
・おもしろいという答えがあるわけではない
●妄想が人間の本質
・AIとかツールで思考する手はいろんな助けがあるが、妄想する頭がないと始まらない
・アイデアはゼロからうまれることはなく、知っていることが組み合わさって生まれるので、知っている引き出しが全然ないと思いつかない
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