『経営戦略原論』を読んで、「自分の方法論の骨格」を作る上でのインプットが出来た

『経営戦略原論』を読みました!
 

 

いわゆる経営学部で学ぶ理論をざっとおさらいできる本だったのですが、さすが、起業もされ、ユーザベース、ラクスル、ユーグレナ五常・アンド・カンパニーで取締役もされている琴坂先生らしく実務的なお話もあり、すらすら読める本でした。
 
面白かったのが(よく考えると当たり前ですが)、それぞれの理論が世の中の状況とともに生まれたところです。
 
できるだけわかりやすく抑えておくべき概念を以下に記します。
 
 
・チャンドラーの「組織は戦略に従う」戦略を経営学の文脈で初めて議論(1962)
・アンゾフの「企業戦略論」(1965)

アンゾフ以前の企業経営の実際は、各部署が達成すべき数値を土台に積み上げ方式で事業計画が立案され、そのための方策は各部署の自律的な活動に任されていた。

組織はまず、事業環境の分析から自社の方向性に関する戦略的意思決定を行い、それを土台として、予算をはじめとする行動計画を定めるべき。

なぜなら人間が未来を完全に予測するのは不可能であるため、予算や計画も完璧にはなりえないと考えたからである。

安定的に成長するなかでは予算を組み達成することで成り立ったが、想定外の事態が起こるときに必要なのは、単なる数値計画ではなく戦略的な計画、すなわち組織の中長期的な方向性であり、数値の背景となる思想と哲学である。

 
 
  • 組織が巨大化、複雑化したところに経営者の意思決定の助ける存在として社内に経営企画部ができたり、戦略コンサルティングが台頭
マッキンゼーが今までグレイヘア(マチュアな大人のたとえ)中心のコンサルを若手のMBA出身者でもできるように定式化

→しかし、多角化が過度に進んだ企業群のニーズすなわち、事業再編に応えられない

そこで、BCGがBCGマトリクスを作る

「多数の事業が併存する中でどの事業に追加で投資し、どの事業を縮小すべきなのか」という課題に一つの明確な答えを提示

 

  • 1970年代以降経済停滞の状況下では事業ポートフォリオを組み替えるだけでは経営が立ち行かなくなる
ここで登場したのが、
・ポーターの「5フォース」と「SCPモデル」(1980年代)

今まで目の前のライバルに集中しすぎていたがより重要な競争要因となる顧客や供給者との交渉力、新規参入や代替品の脅威を意識する

→しかし、外部環境の分析に過度に依存している

 

 

  • 外部環境の分析だけでは同じドメインの会社だけど成功する会社と失敗する会社の差異を説明できないため、内部環境の分析に着目

ここで登場したのが、

・バーニーの「資源ベース理論」(1991)

全社の戦略を個々の事業が持つ競争力の源泉、すなわちコア・コンピタンスの獲得と育成と、そのための組織的な集団学習の仕組みづくりに注力させることに重点を置く

コア・コンピタンスによる経営を説く

 

 

  • 1990年代から2000年にかけて単に資源を手に入れるだけではなく、その企業の独自性を向上させる資源に注目

ここで登場したのが、

知識を重視した「知識ベース理論」、野中先生のSECIモデル

・能力を重視した「ダイナミック・ケイパビリティ」(DC理論)

 

 

  • もう少し人の部分に着目したとき、まだまだ説明できていないことがある

・人間の意思決定を大別すると、

①限定合理性と期待効用で説明しやすい意思決定、

ヒューリスティック(経験則)とバイアスで説明しやすい意思決定、

③直感で説明しやすい意思決定に分けられ、

ヒューリスティックやバイアス、直感にもとづいた意思決定をどう誘導するか

・センスメイキング理論

この理論は人間一人一人が持つこの世界に関する主観的な理解が決定的に重要であるという前提を持つ。
合理性には多様性があり、人間は唯一絶対の価値判断基準で行動するわけではないと主張する。
重要なのは、組織の構成員が行動することである。
個性を生かしながらそれを統制しようとすると、それぞれの構成員の独自の判断軸を活かしながら、それを組織のめざす方向性にどう統制するかが重要となる。それを高い次元で実現できる組織が、競争優位を保持する組織となりうるはずである。リーダーの役割とは、さまざまな感覚や解釈を持つ個々の構成員に、特定の物の見方を与え、その見方を通じて環境や現象を理解させることである。
 
 
 
最後に、今後の経営戦略について
今後外部環境がより複雑性を増し、予測不可能になるなかで、
上記のような過去のフレームワークを用いて考えるにしても
”自分の思考の軸“を構成し、”個人の思考のスタイル“にもなる「自分の方法論の骨格」を持つことの重要性が記されていますが、
そもそもその骨格を形づくる上でもこの本は有用だと思いました。